業務自動化
確定申告の資料整理をAIで効率化する税理士事務所の運用
お役立ち資料:「AIで記帳が自動化できる」の落とし穴(PDF) →
確定申告の資料整理にAIを使う場合、効果が出やすいのは「受領した資料の分類」「読み取り」「不足資料の洗い出し」の3工程です。申告書の作成や税務判断そのものではなく、その前段の機械的な作業に絞ると、守秘義務や精度の面でも運用しやすくなります。本稿では、確定申告 資料整理 AI の活用を税理士事務所の運用として設計するための考え方を、工程ごとに整理します。
確定申告の資料整理をAIで効率化できる工程と範囲
確定申告の資料整理のAI活用とは、顧問先や個人のお客様から届く領収書・通帳・各種控除証明書などを、AIで分類・読み取り・突合し、人が確認する状態まで整える運用を指します。
繁忙期に時間を取られるのは、税額計算よりも資料の「揃え直し」であることが少なくありません。たとえば個人の申告を200件扱う事務所では、1件あたりの資料確認と不足連絡に30分かかるとすれば、それだけで約100時間になります。この部分は定型性が高く、AI適用の費用対効果が見込めます。
AIに任せる範囲の目安は次のとおりです。
- 任せやすい: 資料の種類判別、画像からの金額・日付の読み取り、チェックリストとの照合、不足資料の一覧化
- 人が判断する: 所得区分、必要経費の可否、控除の適用判断、申告書への最終反映
税理士法第45条が定める不真正税務書類作成の禁止に表れるとおり、申告内容の責任は税理士にあります。AIの出力は下書きと位置づけ、判断工程は人に残す設計が前提です。
最新動向:個人事業主のAI利用と会計ソフト側の機能拡大
会計ソフト側でも、資料整理を支援するAI機能が広がっています。弥生が2026年1月に実施した調査では、確定申告関連業務でAIを使う個人事業主は約2割でした。マネーフォワードの2026年2月の調査でも、AIで精神的負担が減ると考える人は約6割に対し、実際の利用経験は約2割にとどまっています。
また、マネーフォワードは2025年11月に領収書整理のAI機能を公開しています。ただし対象は事業収入があり不動産収入がない免税事業者などに限られ、農業所得・不動産所得・消費税の計算には対応していないとされています(各社の公表内容。提供条件は各社の公式サイトで確認が必要です)。
ここから分かるのは、お客様自身がAI機能で資料を作ってくる場面が今後増える一方、品質は一定でないということです。事務所側には、持ち込まれた資料を受け止めて検証する仕組みが求められます。
資料整理を3工程に分けたAI運用の設計
資料整理のAI運用とは、工程を細かく分け、それぞれに入力・出力・確認者を決めることです。
工程1:受領と分類
LINE・メール・クラウドストレージなど複数経路で届く資料を、種類別(収入系・経費系・控除系・不動産系)に仕分けます。ファイル名の規則化や、受領日時の記録もここで行います。受領経路が散らばる事務所では、先に受領窓口を統一することが分類精度に直結します。窓口設計は顧問先からの資料回収の考え方が参考になります。
工程2:読み取りと一次突合
領収書や証明書から金額・日付・支払先を読み取り、前年データや通帳明細と突合します。読み取りの実装についてはAI-OCRによる領収書処理で詳しく扱っています。ここで重要なのは、読み取り結果に「確信度が低い」印を付け、人の確認対象を絞ることです。全件を目視するのではなく、例外だけを見る運用に変えます。
工程3:不足資料の洗い出しと依頼文作成
前年の申告内容を基準に、今年あるはずの資料(保険料控除証明書、医療費の明細、ふるさと納税の受領証明など)を一覧化し、未着分の依頼文を作成します。たとえば前年に生命保険料控除があったのに今年の証明書が届いていない、といった差分を機械的に拾えます。依頼文の下書きまでをAIで作り、送付は担当者が行います。
守秘義務とダブルチェックの設計
確定申告の資料には、マイナンバー、口座情報、医療費など機微な情報が含まれます。税理士法第38条の守秘義務、および個人情報保護法の観点から、次の点を事前に決めておく必要があります。
- 入力データの扱い: 学習に利用されない設定(オプトアウト・API利用・法人向けプラン)を確認し、契約上の取り扱いを書面で把握する
- マイナンバーの扱い: AIへ入力する前にマスキングする、または対象外とする運用を定める
- 出力の検証: 金額・日付の読み取りは必ず元資料と照合し、サンプリングではなく一定の閾値で全件確認に切り替える基準を持つ
- ログの保存: 誰がどの資料にどのAI処理を実行したかを記録する
AIが読み取りを誤るリスクは常にあります。出力を人が確認する手順の作り方はAI出力のダブルチェックに、事務所内のルール整備はAI利用ガイドラインにまとめています。
導入の進め方:小さく始めて繁忙期に間に合わせる
導入は、繁忙期前の段階から3段階で進めるのが現実的です。
- 対象の絞り込み(1〜2週間): 資料点数が多く定型的な区分(給与+医療費控除、個人事業主の経費など)を1つ選ぶ
- 試行(1か月程度): 前年分の資料で、AI処理結果と人の処理結果を比較し、誤り率と所要時間を測る
- 本番適用と見直し: 確認ルールを固めたうえで一部の担当に適用し、繁忙期中は週次で例外を振り返る
測定する数字は、1件あたりの資料確認時間、不足連絡の回数、読み取り誤りの件数の3つで十分です。これらが改善しなければ、範囲を狭めるか手順を見直します。ラクゼイで支援した事務所でも、最初から全区分に広げるより、1区分で運用を固めてから展開するほうが定着しやすい傾向があります。
よくある質問
Q. 確定申告の資料整理にChatGPTなどの汎用AIを使っても問題ありませんか?
入力データが学習に利用されない設定か、契約上どう扱われるかを確認できる場合に限り検討対象になります。個人名・口座・マイナンバーを含む資料は、マスキングや対象外とする運用を先に決めてください。
Q. AIの読み取りミスはどの程度想定すべきですか?
資料の状態(手書き、感熱紙の退色、斜め撮影)で大きく変わります。まず前年分の資料で自事務所の誤り率を測り、その数字を基に確認範囲を決めるのが確実です。
Q. 個人の確定申告でも顧問先の月次業務と同じ設計でよいですか?
資料の種類と時期が集中する点が異なります。月次は継続的な突合、確定申告は期間内の網羅確認が中心になるため、不足資料の洗い出し工程に重点を置く設計が向いています。
Q. スタッフが少ない事務所でも導入できますか?
可能です。むしろ、繁忙期に作業が集中する少人数の事務所ほど、不足連絡や分類といった定型作業の削減効果が出やすくなります。
まとめ|資料整理は「分類・読み取り・不足確認」に絞ってAI化する
確定申告の資料整理では、判断を伴う工程は人に残し、分類・読み取り・不足確認に絞ってAIを適用することが、精度と守秘義務の両面で現実的な出発点です。
ラクゼイでは、税理士事務所専用に設計したAI導入伴走を提供しています。仕訳業務・月次レポート作成・顧問先対応の自動化に関心がある場合は、無料相談 または 画面サンプル をご覧ください。
お役立ち資料(無料)
「AIで記帳が自動化できる」の落とし穴(PDF)
マネーフォワードの自動仕訳では埋まらない、記帳代行の3つの穴とその埋め方を解説。
ラクゼイは税理士事務所の仕訳・月次レポート・日報を自動化するサービスです。守秘義務を守りつつ業務を自動化し、増員ゼロで顧問先キャパシティを2倍にします。