セキュリティ・規制
KSK2稼働と税理士事務所のAI対応|税務行政デジタル化への備え
KSK2と税理士事務所のAI対応とは、国税庁が2026年9月24日に稼働させる次世代基幹システム「KSK2」によって申告書様式・e-Tax接続・税務調査の情報分析が変わることに合わせ、事務所側の業務フローと確認体制を見直す取り組みを指す。KSK2はAI-OCRで書面申告をほぼ全項目データ化し、税目横断でAI分析を行う仕組みを備える。稼働まで残りわずかな今、様式変更への対応と顧問先への周知を並行して進める必要がある。
KSK2 税理士 AI対応の前提|制度の全体像
KSK2とは、国税庁の基幹システム「国税総合管理システム(KSK)」を約25年ぶりに刷新する次世代システムで、2026年9月24日に本格稼働する予定のものをいう。現行の専用OSによるメインフレーム構成から汎用OSベースのシステムへ全面移行し、これまで税目ごとに縦割りだった情報管理を、税目横断で統合的に参照できる形に転換する。
開発にはアクセンチュア、NTTデータ、日本IBM、野村総合研究所など複数のシステム会社が関わり、契約総額は約614億円とされる(国税庁の調達関連情報に基づく)。KSK2の狙いは大きく3つある。第一に、書面提出された申告書をAI-OCRでスキャン・デジタル化すること。第二に、電子申告・書面申告を問わずほぼすべての情報をKSK2に蓄積し、AI分析の対象とすること。第三に、税務署の調査官が現場から直接システムにアクセスできる体制を整えることだ。KSK2自体は「AIによる税務調査専用システム」ではなく、データ中心の事務処理基盤という位置づけだが、蓄積されたデータがAIによる異常値検知や申告漏れの可能性の高い納税者の抽出に活用される点は、税理士事務所の実務に直結する変化といえる。
申告書様式はどう変わるか|約2,300種類が全面改定
申告書様式の変更とは、KSK2のAI-OCR処理に対応させるため、国税庁が管理する約2,300種類の申告書・法定調書のレイアウトを刷新することをいう。主な変更点は次のとおりだ。
- 各様式に様式IDと二次元コードが印字される
- 記入欄が従来の1マスごとの区切りから、AI-OCRが読み取りやすい「フリーピッチ枠」に変更される
- 区分値の記載が「文字」から「数字」中心に変更される
- 源泉徴収票のサイズがA5からA4に拡大される
- 申告書の控用が原則廃止される方向で調整されている
納付書についても変更がある。従来8桁だった整理番号は、システムが自動採番する13桁の「お問い合わせ番号」に置き換わり、用紙はA4三つ折り複写式からA4単票に変わる。国税庁は令和10年(2028年)9月までを新様式への移行期間としているが、顧問先に配布・案内する書類のテンプレートは早めに更新しておく必要がある。
e-Tax接続への影響|IPアドレス変更とメンテナンス期間
e-Tax接続への影響とは、KSK2稼働に伴いe-Taxの通信方式が変わり、事務所や会計ソフトベンダーのシステム側で接続設定の見直しが必要になることをいう。具体的には、これまで固定だったIPアドレスが動的アドレスに変更され、2026年9月24日以降はURLベースでの接続が必須になる。IPアドレスを固定的に許可リストへ登録している事務所のファイアウォール設定やクラウド会計側の連携設定は、事前に見直しておく必要がある。
また、切り替え作業に伴うメンテナンス期間として、9月19日0時から24日8時30分まで、および9月26日0時から24日24時までの間、e-Taxが利用できない時間帯が発生する見込みだ。この期間は繁忙期ではないものの、法定調書の提出や中間申告の期限が重なる顧問先がないか、事前にスケジュールを確認しておきたい。
AI-OCRによる税務調査の高度化にどう備えるか
AI-OCRによる税務調査の高度化とは、これまで電子申告データが中心だったAI分析の対象が、書面提出の申告書までほぼ全件・全項目に拡大されることで、申告内容の突合精度が上がることをいう。KSK2稼働後は、売上計上時期のズレ、役員費用の按分根拠の不足、同業他社比での異常値といった指摘が、これまで以上に自動抽出されやすくなるとみられている。
事務所としての備えは、特別な新技術を導入することではなく、申告書作成時のチェック精度を一段引き上げることに尽きる。たとえば顧問先30社の事務所では、決算仕訳のうち経費按分の根拠資料が薄い取引をAIで事前スクリーニングし、申告前に説明メモを整備する運用に切り替えたところ、税務調査時の指摘対応にかかる時間が目に見えて減った例がある。KSK2による分析精度の向上を前提に、根拠資料を「聞かれたら出す」から「申告時点で添付する」姿勢に変えておくことが、実務上のリスク低減につながる。
KSK2対応で事務所が今すぐやるべき3つの確認
KSK2対応で事務所が今すぐやるべき確認とは、稼働日である9月24日までに済ませておくべき実務チェックのことをいう。
- 会計ソフト・電子申告ソフトのアップデート状況の確認:利用しているクラウド会計・税務ソフトのベンダーから、KSK2対応版へのアップデート案内が来ているかを確認する。IPアドレス固定設定をしている場合は特に優先度が高い。
- メンテナンス期間中の申告・納付スケジュールの調整:9月19日〜24日、9月26日のメンテナンス期間に法定調書提出や納付期限が重ならないか、顧問先ごとのスケジュールを洗い出す。
- 顧問先への様式変更の周知:源泉徴収票のサイズ変更や納付書の様式変更について、給与担当者や経理担当者向けに簡単な案内文を用意しておく。AIを使えば、変更点をまとめた顧問先向け案内メールのドラフトを短時間で作成できる。
よくある質問
Q1. KSK2はいつから稼働するか。
国税庁の発表によれば、2026年9月24日(令和8年)に本格稼働する予定である。稼働前後にe-Taxのメンテナンス期間が設けられている。
Q2. KSK2稼働で税務調査の件数自体が急増するか。
KSK2はデータ中心の事務処理基盤であり、調査対象選定のロジックそのものを公表しているわけではない。ただし、書面申告も含めた全件データ化により、申告内容の突合精度が上がることは確実視されている。件数の増減よりも、指摘の精度が上がる点を前提に準備することが実務的だ。
Q3. 顧問先の会計ソフトが古い場合、何を確認すればよいか。
利用している会計・給与ソフトのベンダーがKSK2対応(様式変更・e-Tax接続変更)のアップデートを予定しているかを、早めに問い合わせておくことが望ましい。特に自社開発の給与システムや古いオンプレミス型ソフトを使っている顧問先は、対応が遅れるリスクがある。
まとめ|稼働まで残りわずか、様式と接続設定の確認を優先する
KSK2は2026年9月24日に稼働する国税庁の次世代基幹システムで、申告書様式の全面改定、e-Tax接続方式の変更、AI-OCRによる書面申告のデータ化が同時に進む。税理士事務所としては、会計ソフトのアップデート状況、メンテナンス期間中のスケジュール、顧問先への様式変更の周知を優先的に確認し、申告書の根拠資料を厚めに整備しておくことが、稼働後のリスクを抑える現実的な備えになる。
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