事業承継で自社株の評価はなぜ重要か|基本の考え方と進め方
「会社を子どもや後継者に引き継ぎたいけれど、自社株の評価と言われてもピンとこない」「株の価値によって何が変わるのか知りたい」。事業承継を考え始めた経営者から、こうした声はよく聞かれます。
この記事では、事業承継における自社株の評価がなぜ重要なのか、評価額は何で決まるのか、いつ誰に相談すればよいのかを、税務用語をかみ砕きながら整理します。具体的な税額は会社ごとに大きく異なるため、数字ではなく「考え方」と「進め方」に絞って解説します。
事業承継で自社株の評価が重要になる理由
自社株の評価とは、株式市場で売買されていない会社(非上場会社)の株式に、税金を計算するための価値を付けることです。
事業承継では、社長が持つ株式を後継者へ贈与・相続・売却などで移すことが多く、その際に株式の評価額が税額計算のもとになります。重要とされる主な理由は次のとおりです。
- 贈与税・相続税の計算の出発点になる:評価額が高ければ、移転時の税負担も重くなる場合があります。
- 後継者の資金負担に影響する:買い取る場合は、評価額が資金計画に直結します。
- 相続人どうしの公平感に関わる:株式の価値が見えないと、他の相続人との間で話し合いが難航することがあります。
- 対策の選択肢が変わる:評価額の見通しがあると、事業承継税制の活用などを検討しやすくなります。
自社株は会社の成長とともに評価が上がることがあるため、「早めに現状を知る」こと自体が大きな意味を持ちます。
非上場株式の主な評価方法
非上場株式の評価方法は、国税庁の財産評価基本通達に定められています。会社の規模などによって、使う方法が分かれます。
| 評価方法 | 考え方のイメージ |
|---|---|
| 類似業種比準方式 | 同じ業種の上場企業の株価、配当、利益、純資産と比べて評価する |
| 純資産価額方式 | 会社の持つ資産から負債を差し引いた純資産をもとに評価する |
| 併用方式 | 上記二つを組み合わせて評価する |
どの方式をどの割合で使うかは、従業員数・総資産・売上などによる会社規模の区分や、株主の立場(経営を支配する株主かどうか)などで決まります。自社がどの区分に当たるかは、決算書を見ながら専門家と確認するのが確実です。
評価額が変わる主な要因
同じ会社でも、時期や状況によって評価額は変わります。代表的な要因は次のとおりです。
- 利益の水準:利益が増えると評価が上がる傾向があります。
- 純資産の増減:内部留保や不動産・有価証券の含み益などが影響する場合があります。
- 会社の規模区分:従業員数や売上の変化で区分が変わることがあります。
- 資産の保有状況:不動産や株式を多く持つ会社は、評価の扱いが特殊になることがあります。
- 評価する時期:決算期をまたぐと数字が変わるため、いつ移転するかがポイントになります。
「評価を下げるための対策」を急ぐ前に、まず現状の評価額を把握し、事業の安定や後継者の育成を軸に考えることが大切です。対策の効果は個々の状況で異なり、一律に有利になるとは言えません。
自社株の評価を進める基本ステップ
初めての場合は、次の流れで進めると整理しやすくなります。
- 株主構成を確認する:誰がどれだけ株式を持っているかを株主名簿などで把握します。
- 直近の決算書・法人税申告書をそろえる:評価の基礎資料になります。
- 概算評価を依頼する:税理士などに、現時点のおおまかな評価額を試算してもらいます。
- 承継の方法を検討する:贈与・相続・売却など、方法ごとの特徴を比較します。
- 制度の活用を確認する:中小企業庁が案内する事業承継税制など、公的制度の最新の要件を確認します。
制度の要件や期限は改正されることがあるため、利用を検討する際は中小企業庁・国税庁の最新情報を必ずご確認ください。
最新動向について
自社株の評価ルールは見直しが議論されることがあります。評価方法や制度は変更される可能性があるため、検討時点の国税庁・中小企業庁の公表資料を確認してください。本記事では、一次情報で確認できた範囲を超える内容は記載していません。
相談先の選び方
自社株の評価は、税務の知識に加えて会社法や相続の理解も必要になる分野です。相談先としては、顧問税理士、事業承継や相続の経験がある税理士、商工会議所、事業承継・引継ぎ支援センターなどがあります。
税理士を選ぶ際は、事業承継や非上場株式の評価の経験があるか、概算評価から対策の検討まで対応できるか、費用の範囲が事前に示されるかを確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 自社株の評価は自分で計算できますか?
計算式自体は公開されていますが、会社規模の区分や資産の扱いなど判断が必要な点が多くあります。まず概算を自分で把握し、正式な検討は税理士に確認する進め方もあります。
Q. 評価額はいつ確認するのがよいですか?
承継の時期が決まっていなくても、決算が確定したタイミングで確認しておくと変化を追いやすくなります。承継を意識し始めた段階で一度試算しておく方法があります。
Q. 赤字の会社でも自社株に評価額は付きますか?
利益が少なくても、純資産などをもとに評価額が付く場合があります。会社の状況により異なるため、個別に確認が必要です。
Q. 評価額が高いと分かったらどうすればよいですか?
慌てて対策を取る必要はありません。承継方法や公的制度の活用など複数の選択肢があるため、税理士など専門家に相談して、自社に合う方法を検討してください。
まとめ
事業承継で自社株の評価が重要なのは、贈与税・相続税や後継者の資金計画、家族間の話し合いの出発点になるからです。評価方法には類似業種比準方式・純資産価額方式などがあり、利益や純資産、会社規模によって評価額は変わります。
まずは直近の決算書と株主名簿をそろえ、税理士に概算評価を相談することから始めてみてください。判断が分かれる論点は、個別の状況に応じて専門家と確認しながら進めましょう。